解答例と解説

 

1.食事由来のグルコースは小腸から吸収され,その半分は肝臓に,残りの約半分は(筋肉)や(脂肪細胞)などに取り込まれる。

 

 グルコースは主にエネルギー源として血液循環によって全細胞に供給される。グリコーゲンの95%が筋と肝にある。

 

 

2.グルコースの空腹時血糖値は(6090mg/dl)の範囲にあるが,血中のグルコース濃度が上昇すると膵臓ラ氏島の(β細胞)から(インスリン)が分泌され,血糖値を低下させる。それに対して,α細胞から分泌される(グルカゴン)は糖新生を活発にしてグルコース濃度を増加させる。その他,(グルココルチコイド),(サイロキシン)なども血糖上昇作用がある。

 

 血糖は食事,ストレス,脳下垂体ホルモン,副腎皮質ホルモンなどの異常分泌で上昇する。一方,低下させる因子として,膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるインスリンがある。

 

 

3.腎臓におけるグルコースの排泄閾値は(170mg/dl)である。この閾値を越えるとグルコースは尿中に排泄される。

 

 血糖が170mg/dl以上になると尿中に排泄される。この170mg/dl値を排泄閾値と呼ぶ。

 

 

4.血中において,グルコースはα型もしくはβ型環状構造をとっているが,β型は全体の約(64)%を占める。

 

 グルコースオキシダーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼはβ-D-グルコースにのみ特異的である。また,ピラノースオキシダーゼはα,β両型に作用する。

 

 

5.歴史的に,グルコースの分析法は還元法,(縮合)法であったが,最近では酵素法が主流である。代表的測定法として,還元法は(リン・モリブデン酸法)及び(ヒ・モリブデン酸法)である。

 

 食事の影響が大なので,早朝空腹時採血が原則である。採決後全血のまま放置すると,解糖作用によりグルコース値が低下するので,採血時に解糖阻止剤を添加する。

 

 

6.アメリカ臨床化学会及び日本臨床化学会がグルコースの標準的測定法として勧告している方法は,(ヘキソキナーゼ)と(グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼ)を共役させ,NADPH340nmにおける吸光度の増加を測定する。この方法は(グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼ)のG-6-Pに対する特異性が高いことから,現在グルコースの測定法の中で最も特異性の高い方法とされている。

 

 HKで生成したG-6-PNADPの存在下で,グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼを作用させ,生じたNADPH340nmの吸光度増加を測定する方法。ヘキソキナーゼの基質特異性は低く,グルコースのほか,フラクトース,マンノースなども基質となるが,糖に対する親和性は高い。

 

 

7.日常的には,グルコースオキシダーゼ‐ペルオキシダーゼ法(GOD-POD)法が頻用されている。本法はグルコースをGODで酸化し,(グルコン酸)と過酸化水素を産生させ,この過酸化水素をPODにより発色系に導く方法である。GODは(β)型に特異的に作用するので,迅速に(β)型に変換するための酵素,すなわち(グルコムタロターゼ)が添加してある。

 

 グルコースオキシダーゼは酸素の存在下でβ‐D‐グルコースに作用し,グルコン酸と過酸化水素を生じる。これはGODの補酵素FADが水素を受け取り,溶存酸素に渡して過酸化水素が生成される。

 

 

8.血糖測定用試料にはEDTAなどの抗凝固薬の他に,解糖阻止薬としてフッ化ナトリウムまたは(モノヨード酢酸)を加えた血漿試料を用いるのが一般的である。それは(モノヨード酢酸)が(グリセルアルデヒド‐3‐リン酸脱水素酵素)の活性を阻害することに基づいている。

 

 

9.ヘモグロビンは赤血球内で非酵素的に糖の付加を受け,グリコヘモグロビンを生成する。HbAがグリケーションを受けたものがHbA1である。一般的に,3種類のHbA1が知られており,それぞれグルコース‐6‐リン酸が結合した(HbA1b),グルコースが結合したHbA1c,さらにフルクトース‐1,6‐二リン酸が結合した(HbA1a)である。そのうち,糖尿病では(HbA1c)が有意に増加し,その診断と治療に利用されている。HbA1cには不安定型と安定型があるが,安定型は不安定型が(アマドリ)転移して生じる。

 

 

10HbA1cは過去(1〜2カ月)の平均血糖値を反映していると考えられている。それに対して,過去1〜2週間の平均血糖値を反映すると言われている成分は(フルクトサミン)である。さらに,過去2〜3日あるいは1週間以内の血糖値の指標となっているのは(1,5‐アンヒドロキシグルシドール)である。

 

 アルジミンは不安定型,ケトアミンは安定型といわれ,HbA1cとして測定されているのは安定型である。赤血球の血中半減期は約30日なので,血中グルコースの1〜2カ月間の総合された平均血糖値を反映することから,長期の血糖コントロールの指標となる。

 

 

11.乳酸脱水素酵素(LDH)は,の反応を触媒する。pH9.5のアルカリ性条件下において,反応は(右)方向に傾いている。

 

 ピルビン酸は,細胞内ではグルコースの嫌気的解糖により生じる代謝産物である。組織の酸素が十分でないと,ピルビン酸から乳酸が生じる。

 

 

12.生体を構成する物質の中で,タンパク質の占める割合は約(17)%である。

 

 

13.これまでに同定されている血漿タンパク質は約(300)種である。これらのほとんどは(肝細胞)で合成されるが,γ‐グロブリンは(形質細胞)で,ペプチドホルモンは(内分泌器官)で産生される。

 

 アルブミンが5070%と大半を占めるほか,多数の分画をもつグロブリンよりなる。グロブリンは通常α1‐,α2‐,β‐,γ‐グロブリンに分けられるが,免疫学的に同定されたものだけでも30種あまりで,各種抗体,酵素,凝固因子を入れると80種以上に及ぶ。

 

 

14.アルブミンの血中半減期は他のタンパク質に比べて長く,約(20)日である。

 

 血漿蛋白の半減期は平均10日といわれ,長いものでアルブミン1723日,IgG1526日,IgAIgM714日,短いものでプレアルブミンの1.9日である。崩壊場所は完全に明らかにはされていないが,アルブミンの13%,IgGの約30%が肝で処理されると考えられている。

 

 

15.血漿タンパク質濃度の測定法には物理的方法,物理化学的方法,化学的方法がある。物理的方法はタンパク質の(濃度とその屈折率が比例すること)を利用して測定する。また,タンパク質の特異吸収波長である280nmの吸収を測定する方法は簡便な方法であるが,この吸収は主に(トリプトファン),(チロジン)によるものである。

 

 細胞の生命現象に必要な物質を運ぶとともに,不要な代謝産物を運び去る輸送の役目をする。そのほかに抗体,酵素,ホルモン,血液凝固因子などとして,それ自身が機能を営んでいる蛋白質もある。

 

 

16.血漿タンパク質の化学的測定法の中で最も一般的な方法は(ビウレット法)である。この方法は,タンパク質を強アルカリ下で編成させ,タンパク質のペプチド結合(4)個と(2)価の(銅)イオンが紫紅色のキレート化合物を形成することに基づいている。

 

 尿素を約180℃で加熱するとビウレットを生じる。このビウレットが強アルカリ側で銅イオンと反応し,吸収極大545nmの紫紅色のキレート化合物を形成する。

 

 

17.正確なタンパク質の定量法に,タンパク質を硫酸などにより湿性灰化してアンモニアに変換し,そのN量からタンパク質濃度を求める方法がある。これはタンパク質中には平均してNが(16)%含まれていることに基づいている。この方法は(滴定法)と呼ばれており,タンパク質定量法の基準法とされている。

 

 蛋白質N=総N−非蛋白質N,血清総蛋白濃度=蛋白質N×6.25

 

 

18.タンパク質に対する色素の特異的な結合を利用して測定する方法もよく用いられている。アルブミンと結合する色素として,これまでにメチルオレンジ以外に(ハブカ)が用いられていた。最近では(ブロムクレゾールグリーン)もしくは(ブロムクレゾールパープル)がよく用いられている。一方,尿中のアルブミンなどは特異抗体を用いて抗原・抗体複合体を測定する(免疫比濁法)もしくは(免疫比ろう法)が日常検査で用いられている。

 

 BCG試薬をpH4.2に調整したあと,非イオン性界面活性剤を加えると,BCG試薬は青色から黄色になる。アルブミンと結合することにより,628nmに極大吸収をもつ青緑色となるので,628nmで比色する。

 

 

19.血清膠質反応は血清にタンパク変性剤を加えて生じた混濁や沈殿を定量的に測定するものである。代表的な方法として(ZTT)及び(TTT)があるが,(ZTT)はIgG量と非常によく相関する。

 

 膠質反応の詳細については不明であるが,基本的にはアルブミンとグロブリンの量的変化を沈殿反応についてみることにある。沈殿しやすいγ‐グロブリンが増加すれば沈殿量が増え,逆にアルブミンが多くなれば,その親水性に由来する沈殿粒子の安定化によって沈殿が抑制される。

 

 

20.セルロースアセテート膜電気泳動法で血清タンパクを泳動したとき,一般的に5分画に大別することができる。α2分画に泳動される代表的なタンパク成分は(ハプトグロブリン),(セルロプラスミン)であり,またβ分画に泳動されるタンパク成分は(トランスフェリン),(ヘモぺキシン)などである。それに対して,アルブミンより少し早く移動する微量タンパク質はプレアルブミンと呼ばれるが,別名(トランスサイレチン)とも呼ばれ最近注目されているタンパク質である。

 

 酸性溶液中では,アミノ基の荷電により+となり,アルカリ性溶液中ではカルボキシル基の荷電により−となる。+と−の量がちょうど等しくなるような溶液のpHを,そのタンパク質の等電点という。

 

 

21.セルロースアセテート膜電気泳動法の正常パターンを参考に,次のパターンを示す代表的疾患名をそれぞれ一つ答えなさい。

  

 

 生理的変動はかなり大きい。性差なし。

 

 

22.ある血清タンパク質を正確に特定する方法として,目的タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いて二次元的に確認する方法がよく用いられる。この代表的な方法が(免疫電気泳動法)であり,この方法を応用したのが(ロケット免疫電気泳動法)である。本法は寒天もしくはアガロース中に特異抗体を予め均一に含めておき,電気泳動後における沈降線の高さが抗原量に比例する事実に基づいている。

 

 

23.血清タンパクもしくは尿中タンパクの中に特異なタンパクが出現する場合がある。ベンスジョーンズタンパクはその典型である。本タンパク質は5660度の加温で析出,混濁し,さらに煮沸すると再び溶解する特異な性質を有するタンパクであり,一般的に免疫グロブリンの(L)鎖が(2)量体として血中や尿中に出現したものであることが多い。

 

 

24.べンスジョーンズタンパクは多発性骨髄腫や(原発性マクログロブリン血症)において出現する。

 

 

25.急性相反応タンパクとして知られているのは(ハプトグロビン),(セルロプラスミン)などである。中でも肺炎双球菌細胞壁から抽出されたC多糖体と沈降反応を起こす(C反応性蛋白)は特に有名である。

 

 分子量約115,000で,γ‐グロブリン位にある代表的な急性相反応物質である。炎症などの組織破壊に鋭敏に反応。

 

 

26.一般に,鉄の運搬体として知られているのは(トランスフェリン)であり,糖タンパクの一種である。本タンパク質は肝細胞や網内系細胞に多く分布している鉄貯蔵タンパク,すなわち(フェリチン)との間で鉄の交換を行い,血清鉄濃度を維持している。

 

 血清フェリチン値の低値は鉄欠乏状態に限られ,その診断的価値は高い。高値はヘマジデローシス,ヘモクロマトーシスの鉄過剰,肝炎,悪性腫瘍でみられる。

 

 

27.尿素,尿酸,クレアチニンなどはタンパク質以外の窒素成分であり,非タンパク性窒素と呼ばれる。その中でも尿素は組織における窒素代謝の最終産物であり,尿素回路を経て尿中に排泄される。その際,組織で生じた毒性の高いアミノ酸由来のアンモニアは,その1分子がα‐ケトグルタル酸に結合した(グルタミン酸),及び2分子のアンモニアが結合した(グルタミン)として肝細胞に運搬される。この(グルタミン)は肝細胞で代表的な酵素である(グルタミナーゼ)により分解されアンモニアが生じる。このアンモニアは(カルバモイルリン酸)に変換され,尿素回路に流入する。最終的に,尿素回路の最終段階の酵素であるアルギナーゼによって(アルギニン)が加水分解され尿素が生成し,尿中に排泄される。尿素の測定は化学的反応として,Fearon反応を利用した(ジアセチルモノオキシムによる比色法)がよく知られている。

 

 尿素窒素の測定法はウレアーゼを用いる酵素法,Fearon反応を用いるジアセチルモノオキシムによる比色法が主な方法である。通常,その窒素量で表現されるが,60/28を乗じると尿素量となる。

 

 

28.アンモニアの測定には,化学的な方法としてBerthlot反応を利用した(比色法)の他に,最近では,特異性が高く自動分析に応用できる酵素法として(ウレアーゼ・GLDH法)が主流である。

 

 肝実質障害が高度になると,肝臓での尿素合成が低下するため,血中のアンモニア量は増加し,肝性昏睡を起こす。血中アンモニアは中枢神経系に対する毒性が非常に強い。

 

 

29.クレアチニンは分子内に反応性の高い基,すなわち(活性メチレン)基を有するため,アルカリ性ピクリン酸と反応し赤色を呈する。この反応をとくに(Jaffe反応)と呼び,影響物質も多いが臨床検査では比較的よく用いられている。しかし,最近では温和な条件で測定が可能な酵素法が普及しつつある。その一つはクレアチニンを(クレアチニナーゼ)でクレアチンに変換し,次にクレアチナーゼで(サルコシン)に変換する。続いて,(サルコシンオキシダーゼ)で酸化して過酸化水素を産生させ,最後にペルオキシダーゼで発色系に導く方法である。ペルオキシダーゼ発色系は共存する還元物質,とくにビタミンCの影響を受けやすいが,その対応策として(アスコルビン酸オキシダーゼ)を用いて,その影響を回避する工夫がなされている。一方,クレアチニンを(クレアチニンデイミナーゼ)によりアンモニアを産生し,そのアンモニアを測定する方法も比較的よく用いられている。

 

 Jaffe反応を利用したアルカリ性ピクリン酸法はクレアチニンの活性メチレン基とピクリン酸が結合して発色することを利用した反応である。この方法は,特異性が低く,また感度が低いために使用血清量が多いという欠点があるため,今日では酵素法が利用されるようになった。

 

 

30.尿酸は(プリン体の最終代謝産物)として,尿中に排泄されるが,その前駆物質であるキサンチンは(キサチンオキシダーゼ)により酸化され尿酸が生成する。最も一般的な方法は,(ウリカーゼ)を用いた酵素法であり,この酵素の作用で得られた過酸化水素をペルオキシダーゼ発色系で測定する方法である。その他,この過酸化水素を(カタラーゼ)とメタノールにより(ホルムアルデヒド)を生成させ,(ハンチ)反応に導く方法もあるが,最近ではあまり利用されていない。

 

 尿酸生成の母体となるプリン体は,食物の摂取や核蛋白質の崩壊から得られ,肝臓,筋肉,骨髄で尿酸が生成される。生成された尿酸の1/3は胆汁,腸に分泌されるが,2/3は尿中に排泄される。

 

 

31.ビリルビンは赤血球の代謝最終産物として産生される赤色胆汁色素である。2個の(プロピオン酸基)を含む2塩基酸で,水には不溶の(テトラピロール化合物)である。酸化されると緑色調の(ビリベルジン)になる。ビリルビンは非抱合型と抱合型が存在するが,後者は肝ミクロソーム中の(グルクロン酸トランスフェラーゼ)と(UDP‐グルクロン酸)によってビリルビンジグルクロナイドとなり親水性となる。これを別名(直接ビリルビン)という。このビリルビンは(ジアゾ)試薬と直接反応することができる。血清ビリルビンの定量はEhrlichの(ジアゾ)試薬を用いてアゾビリルビンとして測定する方法が主流である。総ビリルビンを測定するために(メタノール)を添加しているのが,Malloy-Evelyn法である。それに対して,カフェイン‐安息香酸‐酢酸ナトリウムを用いて混濁を防ぐ方法に改良したのが(Jendrassik-Cleghorn法)である。

 

 ジアゾ反応でただちに反応するビリルビンを直接ビリルビン,反応促進剤を加えてはじめて反応するものを間接ビリルビンといい,前者は抱合型,後者は遊離型ビリルビンに相当する。直接ビリルビンには,ジアゾ試薬と迅速に反応するジグルクロナイドと,やや反応が遅いモノグルクロナイドがある。

 

 

32.ビリルビンはHPLCで分析すると,一般的に4種類に分かれる。その中で,アルブミンと共有結合した抱合型ビリルビンである(δ‐ビリルビン)が注目されており,4種類の中で最も早く溶出される分画である。

 

 dry chemistryでは総,抱合型,非抱合型ビリルビンをそれぞれ分別測定できるが,総ビリルビン測定値と抱合型と非抱合型ビリルビンの和が一致しないところから,これをδ‐ビリルビンと判定した。これはアルブミンと共有結合したもので,ジアゾ反応には直接ビリルビンとして反応し,直接ビリルビン=抱合型ビリルビン+δ‐ビリルビンの関係にある。

 

 

33.溶血性貧血で増加するビリルビンは(遊離)型であり,肝性黄疸もしくは肝後性黄疸で増加するのは(抱合)型である。

 

 新生児では,生後1週間で新生児黄疸を呈し約10mg/dlとなる。その後低下し,生後3〜5カ月で最低となり,それ以後徐々に増加して15歳で成人値に達する。

 

 

34.血清脂質の主な成分はコレステロール,トリグリセライド,(リン脂質),遊離脂肪酸である。遊離脂肪酸は主に(アルブミン)と結合して一種のミセル状のリポタンパクを形成して血中を循環している。このリポタンパクはその構成成分の割合によってCMVLDL,(IDL),LDLHDLに分類されている。これらのリボタンパクは基準法である超遠心分離法により,その(比重)の差により分類されている。この中で,アポタンパク,コレステロール,トリグリセライドの割合が最も多い分画は,それぞれ(HDL),(LDL),(CM)である。

 

 血中の遊離脂肪酸は,オレイン酸が29%でもっとも多く,ついでパルミチン酸25%,リノール酸17%,ステアリン酸13%,その他は少量である。血中では遊離脂肪酸はアルブミンと結合して存在し,末梢組織の重要なエネルギー源となっている。FFAまたはnon-esterified fatty acidsとよばれている。

 

 

35HDL以外のリポタンパクに含まれる主なアポタンパクは(アポB)である。

 

 脂質を含むグロブリン分画をリポ蛋白とよび,通常4つに分画される。4つの分画は一般に,超遠心法を利用した場合はカイロミクロン,超低比重リポ蛋白,低比重リポ蛋白,高比重リポ蛋白,電気泳動を利用した場合はカイロミクロン,preβ‐リポ蛋白,β‐リポ蛋白,α‐リポ蛋白とよばれている。

 

 

36.電気泳動法により血清リポタンパクを分画したとき,β分画に泳動されるのは(中間比重リポ蛋白)及び(低比重リポ蛋白)であり,α分画に泳動されるのは(高比重リポ蛋白)である。

 

 泳動分離したリポ蛋白分画にオゾンを作用させると,脂質を構成している不飽和脂肪酸の二重結合部にオゾナイドが形成され,ついでアルデヒド基に変わる。アルデヒド基は亜硫酸で還元して無色にしたフクシンと作用し,赤紫色に発色する。

 

 

37.血清アポリポタンパクのうち,VLDL及びCMの分泌作用を有するのは,それぞれ(Apo-B100)及び(Apo-B48)である。また,各種のリポタンパク受容体に結合するリガンドとして重要なアポリポタンパクは(Apo-B100),(Apo-E)である。その他,肝臓のコレステロールを組織に運搬するのは(LDL)であり,悪玉コレステロールと呼ばれており,動脈硬化を促進する方向に働く。この(LDL)は末梢組織の(LDL受容体)と結合して細胞内に取り込まれる。逆に,組織中のコレステロールを肝臓に運搬するのは(HDL)であり善玉コレステロールと呼ばれている。このような末梢組織中の遊離コレステロールの肝臓への運搬をコレステロールの逆輸送と言う。

 

 血漿の高比重リポ蛋白に含まれるコレステロールをHDL‐コレステロールとよび,抗動脈硬化作用の面から注目されている。HDLの抗動脈硬化作用機序としては,血管壁に蓄積された遊離のコレステロールを除去し,LCATの作用によりエステル型として肝へ運搬して異化し,また,血中のコレステロールを運搬し,末梢組織細胞に蓄積する役割をもつ低比重リポ蛋白の抑制を行うという2つが考えられている。

 

 

38LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の活性化作用があるアポリポタンパクは(A-T)と(C-T)である。逆に,抑制作用があるのは(A-U)である。

 

 HDLのアポA-1に結合したレシチン・コレステロール・アシル・トランスフェラーゼは,動脈壁や末梢組織の遊離コレステロールを受け取り,コレステロールエステルを生成し,HDL内部に取り込む。そして,コレステロールエステルは非酵素的に肝で処理される。

 

 

39CMレムナントはCMからLPL(リポタンパクリパーゼ)によりトリグリセライドの一部が分解された残りで,肝細胞の(レムナントレセプター)に結合して摂取され代謝される。

 

食事中の脂肪が消化吸収されると,小腸粘膜でカイロミクロンが合成される。カイロミクロンは毛細血管壁に付着しているリポ蛋白リパーゼによりトリグリセリドが分解され,カイロミクロンレムナントとなり,その大部分が肝細胞のレムナントレセプターから取り込まれて処理される。

 

 

40.血清リポタンパクの分析法として,超遠心分離の他に,日常的に繁用されている方法は(電気泳動法)である。特殊な方法として,特異抗体と抗原の自然拡散により生じた円弧上の沈降線の大きさを測定する(SRID),及び酸化LDLの測定に利用されている(ELISA)がある。

 

 セルロースアセテート膜を支持体とすると,カイロミクロンの一部もしくは全部がα2‐からβ‐グロブリン分画の前端に移動するため,カイロミクロン分画としてはみられないことがある。カイロミクロンは4℃,一夜放置した血清では上層にクリーム層として出現する。

 

 

41.コレステロールは(アセチル‐CoA)から(メバロン酸),スクアレン,ラノステロールを経て生合成される。コレステロールはその約(70)%がエステル型コレステロールであり,血中のエステル型コレステロールはすべて(LCAT)の作用により,レシチンの(β)位脂肪酸が遊離型コレステロールに転移して生成される。コレステロールは体内に多く存在する成分であるが,(ステロイドホルモン)や(ビタミンD)合成のための前駆体としても極めて重要な成分である。

 

 cyclopenthenoperhydrophenanthrene核をもった一価のアルコールでC3OH基をもっている。血清中では30%が遊離型コレステロールで,残り70%はC3で脂肪酸と結合したエステル型として存在し,これらを総称して総コレステロールとよぶ。

 

 

42.コレステロールの分析法は大きく分類して,化学的方法,酵素法,沈殿法に大別される。化学的方法のうち,無水酢酸‐硫酸発色系を用いる(Liebermann-Burchard)反応,塩化第二鉄‐酢酸‐硫酸発色系を用いる(塩化鉄)反応,及びオルトフタルアルデヒド反応を用いた方法である。この反応のうち,アメリカCDCでコレステロール測定法の標準的測定法として採用されているのは,エステル型コレステロールをアルコール性水酸化カリウムでけん化後,遊離型コレステロールを石油エーテルで抽出し,残渣を無水酢酸‐硫酸発色系の反応で発色させる(Abell-Kendall)法である。

 

 Abell-Kendall法がアメリカでは標準的な方法とされている。本法は,アルカリ性エタノールで血清中のリポ蛋白の分解とエステル型コレステロールのけん化を行い,遊離型を石油エーテルで抽出し,溶媒を蒸発,乾固したのち,残渣中のコレステロールをLieberman-Burchard反応を用いて測定する。

 

 

43.コレステロールの酵素的測定法は,エステル型コレステロールを(コレステロールエステラーゼ)で加水分解後,遊離型コレステロールを(コレステロールオキシダーゼ)で酸化して過酸化水素を産生させ,その後この過酸化水素をペルオキシダーゼ発色系に導く方法である。それに対して,日本臨床化学会が正確性を確保できる比較対照法として勧告している方法は,コレステロールをNADの存在下で(コレステロールデヒドロゲナーゼ)を作用させ,340nmの吸収を測定する方法である。

 

 酵素法では,ビリルビン,アスコルビン酸がペルオキシダーゼ反応の基質となり,H2O2を消費するため負の誤差,そしてビリルビンが500nmで若干吸収があるための正の誤差,この正負の誤差が相殺された結果,ビリルビンの高濃度においてやや負の誤差となる。アスコルビン酸の影響を消去するために,試薬にアスコルビン酸オキシダーゼが加えられている場合もある。

 

 

44HDLコレステロールの測定はVLDL及びLDKコレステロールを予め除去する必要がある。その除去に用いられているのはポリアニオンと2価の陽イオンである。ポリアニオンとしては,(デキストラン硫酸)などが,2価の陽イオンとして,(カルシウムイオン)などが用いられる。

 

 HDL-Cと虚血性心疾患の発生頻度との間には逆相関がある。しかし,近年HDL-Cは虚血性心疾患以外の要因でも上昇することが知られてきた。

 

 

45.トリグリセライドはトリアシルグリセロールとも言われ,グリセロールに3分子の脂肪酸が(エステル)結合したものである。生体中にはジグリセライド,モノグリセライドも存在するが,トリグリセライドが中性脂肪の(9095)%を占めているので,便宜的にジグリセライド,モノグリセライドを含めて中性脂肪と称している。トリグリセライドに結合している脂肪酸の中で最も多いのは(オレイン酸)である。

 

 1分子のグリセリンが3分子の脂肪酸とエステルになったもの。別名トリアシルグリセロールともいう。

 

 

46.トリグリセライドの分析法は,骨格のグリセロールもしくは脂肪酸を測定することに基づいている。現在広く用いられているのはグリセロールを測定する酵素法である。日本臨床化学会が勧告している方法は,アルコール性水酸化カリウムでけん化後,生じたグリセロールにATPの存在下で(GK)を作用させ,(グリセロール‐3‐リン酸)とADPに変換する。次に,このADPとホスホエノールピルビン酸とから(ピルビン酸キナーゼ)の作用でピルビン酸を生成する。最後に,LDHによりこのピルビン酸をNADHの存在下で乳酸とNADに変換し,NADH340nmの吸収の減少を測定する方法である。

 

グリセロールの測定はグリセロール酸化酵素,グリセロールキナーゼ,グリセロールデヒドロゲナーゼと3大別される。今日ではGKGPO法が頻用されている。

 

 

47.リン脂質は分子中にリン酸を含む複合脂質である。リン脂質は大きく二種類に大別することができる。すなわち,(グリセロリン)と(スフィンゴリン)をその骨格とした脂質である。リン脂質の中で最も多く存在するのは(レシチン)であり,全体の約68%を占める。臨床検査においては,できるだけ多くのリン脂質を同時に測定したいことから,ホスホリパーゼDを用いて,(コリン)を遊離させ,(コリンオキシダーゼ)により生じた過酸化水素を測定する方法であり,総リン脂質の約95%を捕捉できる。

 

 その分子中にリン酸を含む複合脂質の混合物をいう。リン脂質は,(1)グリセロリン脂質と,(2)スフィンゴリン脂質に大別される。

 

 

48.コレステロールの異化によって肝臓で最初に合成される胆汁酸を(1次胆汁酸)と呼ぶ。この(1次胆汁酸)にグリシン,もしくはタウリンが抱合した胆汁酸は,それぞれ(グリココール酸)及び(タウロコール酸)となって胆嚢に貯蔵される。胆嚢に貯蔵された胆汁酸は食事に伴って腸管内に分泌され,腸内細菌によって修飾される。脱抱合と抱合胆汁酸塩の化学変化によって生成される胆汁酸を二次胆汁酸といい,一般的に(デオキシコール酸)と(リトコール酸)が知られている。

 

 肝でコレステロールから1次胆汁酸として,コール酸,ケノデオキシコール酸が生成される。1次胆汁酸はタウリンやグリシンと抱合して,胆汁中に分泌,腸管に排泄され,これらは腸内細菌でそれぞれ2次胆汁酸のデオキシコール酸とリトコール酸に変換される。