臨床生理学 解説

―心電図―

心臓を流れる脱分極の波は細胞外液内で局所電流を引き起こし,小さな電圧の変化として体表面で検出される。これが心電図(ECG)の基礎となる。古典的な心電図は左手と右手(第T誘導),右手と左足(第U誘導),左手と左足(第V誘導)の間の電位差として記録され,アイントーベンの正三角形で表される。電圧の大きさは細胞が多ければ多いほど強い電流を発生するので,脱分極している筋肉の量と脱分極が進んでいく方向,すなわち,ベクトル量に依存している。

 

心房収縮(A):静脈と心房の間には弁がなく,心房の収縮は心房圧をわずかに上昇させa波が形成される。心室が完全に充満したときの心室容積は拡張終期容積(EDV)と呼ばれ,ヒトでは約120〜140mlである。拡張終期圧(EDP)は10mmHg以下で,左心室壁が右心室壁よりも厚く硬いため,右心室よりも左心室で高い。EDVは心室の収縮力に強く影響している(スターリングの法則)。心房の脱分極は心電図(ECG)のP波を形成するが,心房の再分極は分散しているので心電図上ではみられない。